AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−

ゲームネタ・夏の詩人(サムライトルーパーピアノ組曲「鳥」より)

【注意:完全なゲームネタの為、予定の真田諒一を登場させています。小説版とは別枠としてお楽しみ閲覧下さい】
月龍は時空を渡る途中で水滸の鎧が海のそこに沈んだのを感じた。水滸の継承者が身投げでもしたのかと思い、時空を抜けた。
「何で・・・?」
この時代の「マイナスのエネルギー」から推察するに、アラゴは人間界に出ている。時空間の向こうからも当代たちのことは知っていた。
迦雄須の消滅と引き換えに妖邪界への道が開いた。5勇士はそこから妖邪界に行き、アラゴを撃退させた。
月龍はふと、脇に立つ青年---真田諒一を見る。
彼は烈火の鎧が生贄の怨念に染まっていた時代---1973年に出会った、現在の烈火である真田遼の兄である。1973年8月15日、彼は生贄とされ、同時に母親も長男の死のショックから産後に死亡した。残された父と次男は家を出、次男---真田遼は長じて現在、この春にアラゴを撃退させた。それは鎧伝説の始まりを意味しているのか、それとも終わりを意味しているのか、誰にも決められなかった。
諒一は烈火のアンダーギアを纏っていた。もちろん月龍のと同様にアンダー「ウェア」と言っていい代物で、月龍が天空のシンボルをつけているのにたいして彼は烈火のシンボルをつけていた。彼の場合、この世界の烈火の兄なのだから「シンボル」は当然といえば当然だったが、鎧そのものは弟の遼が継いでいる。月龍自身の世界の烈火はレオンハルトが継いでいるので、月龍は輝煌帝の力の一部の「烈火」を、月龍自身の「天空」の鎧の形をコピーして諒一に貸し与えたのだ。とはいえ継承者ではないので、鎧そのものは使えない。武器そのものは遼の烈火剣から力を模倣したダブルセイバー---かのNGCでも見た、対烈火用武器である---を所有している。それでもオリジナルには劣る。
アンダーギアを纏い立つ彼の母親にそっくりなその横顔には、月龍同様に戸惑いがあった。彼は月龍の輝煌帝の力を借りている状態なので水滸が海に沈んだ気配を感じ取ったのだ。
が、せっかくの母親似の美貌が台無しになっている口調に、月龍は内心めまいを覚えた。彼の母親が聞いたらどう思うだろうか。
「ここで何かあったんか?」
めまいをこらえつつ月龍は彼の言いたいことを理解した。
-----アラゴが水滸を海に沈めたのだろうか?
だが、抜けた先の海は夜の静寂だけが漂っていて、アラゴの気配は微塵もなかった。
諒一が周囲に頭をめぐらせる。
「あそこ、誰か居るぞ」
諒一の示す先の浜辺にはただ1人の少年が居た。茶色っぽい髪をぬらして歩いている。幼く見えるその表情はどことなく厳しさすらも漂っている。
何かを決心しているかのようだった。
月龍は彼に気取られないように、彼の背後の浜辺に降りた。「輝煌帝」の力の一つ、「幻」の呪を使っているので見えないし、音もしないはずである。
が、少年は振り向いた。
月龍はぎょっとした。諒一も眉をあげる。
「今、誰かが・・・?」
少年は周囲を見ていた。「幻」の呪をかけた月龍と諒一には気づかず、眉をひそめていた。
「妖邪・・・ってわけでもないか」
肩をすくめると彼はそのまま歩き去った。
「伸くん、かな」
諒一のつぶやきで月龍は理解した。彼が水滸であることを。

「しの兄・・・」
月龍は京都の従兄を思った。
歩き去っていく少年が継承者ならば、何故「水滸」を海に?
水滸を封印するようなことがあったのだろうか?

月龍はしばらく少年の背後を見送った後で時空を飛ぼうかと思ったが、「壁」に阻まれた。
「なん・・・」
何が起こったのだろうか。
「おいおい・・・」
諒一も目を丸くする。時空間の自分達の周囲に見えない壁が出来ているのを実感したのだ。
月龍は眉をひそめた。さきほどの少年に関連があるのかと思ったが、穏やかな海を見るにこれから何が起こるのか見当もつかなかった。
「何かが起こるってことかな」
「見当もつかない。水滸ならば継承者に危険が迫っているわけでもなかったし」
「アラゴは遼が痛めつけてやったはず・・・」
諒一がつぶやく。確かにアラゴの気配はない。先ほどの少年の身に危険が迫っていることはない。
「・・・・・・」
月龍はしばらく海を眺めていた。周囲を見て目を細める。
浜辺の「人工物」が多い気がしたのだ。

テトラポットなどがいやに多く配置されていた。

月龍はオーストリアで知った天橋立の現状を思い出した。
「どうした?」
諒一は月龍の表情から何かを読み取ったらしい。月龍は説明した。
月龍の世界では21世紀に地球環境を保護するべく「関西議定書」が採決された。が、先進国であるはずの日本は結局その運動を成就させることは出来なかった。
過去世界ではあるがこの海も例外ではなく、海底に何らかの影響が与えられているのが人工物の配置の様子から理解できた。
黙って聞いていた諒一は、「海底になんか水滸と関わるようなことでもあるのかな」とつぶやいた。
月龍は頷くと空間のみを渡って、水滸の鎧の気配を探ってみた。海の中に沈められているのは気配から理解できたので、目当てのポイントをチェックして海の中に移動する。
そこには海底洞窟のような穴が見えた。
確認すると空間移動をして海底洞窟に進む。
どうやらビンゴだったようで、そこには「ホーリーロッド」と似たような形式の模様が壁面にうがたれていた。
そして祭壇と思しき場所に水滸の鎧珠が安置されていた。
「・・・この海底洞窟、崩れるのか」
月龍は周囲を見た。一見して変わりはなかったが、外には「海草」が無かった。海洋学は専門じゃないので漠然としか分からなかったが、埋立によって海流が変わり、寒流及び暖流によってもたらされるはずの海底環境が異なってしまうと海草の生育環境も変わってしまうという講義を受けたのを思い出した。

この辺りは海流の変化で岩などが削られているのではないか?

「おいおいおいおい。そんなところに鎧玉を置いちゃったら伸くんはどうなるんだ?」
アラゴはまだ「生きて」いる。ダメージを与えたが、おそらくは現時点では大人しくしているのだろう。傷を癒すために。
「遠隔操作というのが出来るレベルなら、四方を壁に囲まれてもこの程度なら取り出せるだろうけど」
「・・・・・・あの様子じゃあ、まだ使いこなせるには程遠いぞ」
諒一は祭壇に近づいて、洞窟内を光で満たす水色の鎧玉をしげしげと見た。昔ならば一人前として扱われた15歳は、現代では「少年」のカテゴリそのままである。諒一は父親からの数少ない知識から水滸の継承者を見た。
月龍は諒一の言葉にうなずくと、水滸の鎧玉を祭壇から取り出した。
が、どうしたらいいものか。
まさか、直接本人に会って渡すわけにもいかない。如何なる事情があったにせよ、月龍は平行世界の住人なのだ。諒一にしても、故人である。まさか相手に「遼の亡くなった兄です」などと紹介できまい。その瞬間に妖邪扱いでもされたらアウトである。
今はアラゴが降臨し、鎧戦士たちが存在している時代なのだ。
そんなときに二重に継承者がいるようなことだけは避けたい。
月龍と諒一はしばらく水滸の鎧珠を手に、対策を練って佇んでいた。
そのときだった。
パシャン。
背後で水音がした。
月龍はぎくっとした。諒一も眉をひそめて振り向く。先ほどの少年が戻ってきたのだろうか。
が、違った。
「イルカかよ」
諒一が安堵の息を漏らす。が、振り向いた先にいたのは、シャチであった。諒一は長いこと地下牢暮らしで、海や魚についても父親から昔語りに聞かされただけであった。シャチとイルカの区別がつかないのも道理である。
シャチは出口に通じる水面に浮かんで、じっと月龍と諒一を見ていた。2人は知らないが、このシャチは継承者の愛鯱である。
諒一はふとシャチが視線を動かしたかのように見えた。月龍はシャチが「意思を持っている」ことに眉をひそめた。
「ひょっとして、この水滸の鎧珠はお前が?」
シャチは水滸の鎧珠から月龍に視線を動かした。傍で諒一が目を丸くする。
「・・・」
月龍はいちかばちか、このシャチにゆだねてみようかと思った。もしシャチが月龍を狙ってくるのであれば斬って捨てれば良い。
そっと近づくと鎧珠を正面に差し出す。諒一は黙って成り行きを見ていた。
シャチはじっと月龍を見ていたが、ゆっくりと近づくと口を開けた。月龍はシャチの口に鎧珠を入れる。
「頼みます」
月龍はこのシャチが水滸の継承者に関わりがあると理解し、うなずいた。
シャチは翻しざまに水面を尾びれで軽く叩いた。
シャチが完全に水面下から消えてしばらくすると、地すべりが起きた。
「これでここには誰も入れなくなったな」
諒一の言葉どおり完全にこの空間は閉ざされ、永遠に後代の目に付くことはなくなった。
月龍は地すべりの響きを感じて何故「壁」が出来たのかについて納得し、そのまま時空間に飛んだ。

「にしても、何でこんな時に大事なものを置いたんだ?」

が、後に水滸の継承者が祭壇に置いた理由を知ったとき、月龍は眉間にシワを寄せて毛利伸に説教していた。
「結婚するといってもすぐやるわけじゃないんです。日本では婚姻届さえ出せば『結婚』そのものは済むはずでしょう?式ってのは意外に準備に時間がかかるんですよ。最低で1年です。私も1年と2ヶ月で色々と準備していたんです。出来ちゃった結婚ならそりゃすぐ責任をとるべきでしょうが、お姉さんはそのときお子さんが居なかったでしょう?男の人はそんな式の進行とかそういうの興味が無いだろうけど・・・そんな理由で貴方はあんな危険な場所に珠を置いたんですか?私が居たから良かったものの居なかったら完全にアウトでしたよ」
対する毛利伸は珍しく詰まった表情を見せて、秀と当麻に「あいつが説教されるの、初めて見た」と言われていた。
それを見ていた諒一は黙って肩をすくめただけであった。

本編に戻る 裏話(?)を見たいので続ける