AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−

再び・・・-月龍サイド-

体だけで2メートルもあろうかというクモの体に白人男性の頭部を貼り付けたような『モノ』が竜樹に踊りかかった。口には獲物を捕らえるための牙が見え、どう見ても『ヒト』の類ではなかった。
「ダーウィンが見たら泣くな」
顔をしかめた竜樹との連携で「彼ら」を次々と消して行った。竜樹がクンフーでなぎ倒し、倒れた隙を見て月龍が火をぶつける。周囲の「彼ら」は月龍たちへの憎しみどころか、全てのモノへの憎しみを抱いていた。
私たちがここに来るのが少しでも遅れていたら。
否、ここで食い止めなかったら、彼らはそのまま街になだれ込み殺戮を繰り返すつもりだろう。
そこまで考えて、月龍は奇妙なことに気づいた。
先ほどから彼らの悲鳴を聞いている。
それは私たちへの呪いを吐くかのようにけたたましかった。
これだけの声量なのに、何故誰も来ない?
彼らの屍が月龍たちの周囲に広がると、仲間の屍に足を取られるのか彼らも動きが鈍くなった。
「竜樹」
「うん。・・・変だな。何で誰も起きてこないんだ?ここから一番近いアムスさんでさえ何で起きてこないんだ?」
不可解な状況に2人が首を傾げた時。
「それは、私がここの時間を止めたからですよ」
突然の第三者の声に二人は驚きながらもその主を探した。
声の主は後ろに居た。月龍の作った炎に照らされて浮かび上がったのは神父だった。否、神父と服装が似ているような気がした。が、帽子は深く被っていて、口元しか分からなかった。口元がしわだらけなのは気のせいか老人のようにも見えた。
「貴方は?」
何故神父さんがここにいるんだろうか?月龍は神父の居る場所を見た。彼がそこにいた記憶が無い。何度も見ているのに、だ。
「時間を止めたって、どーゆーこった?」
竜樹はいぶかしげに神父を見る。
帽子を深くかぶっているために顔が見えない以外は、何処からどう見てもごく普通の神父である。
神父はかろうじて見えた口元に笑みを浮かべると手を軽く振る。すると、月龍たちの背後にいた人ならざるものたちが霧に包まれたかのように薄くなり、消えた。
「ちょっとした余興のつもりでしたが、彼女達には可哀想なことをしましたね」
「嘘つけ。おまえ、神父の格好をしているが本物の神父じゃないな。アレは最初からそうするつもりだったんだろ」
アレとは先ほどのゾンビに彼女達を襲わせたことである。竜樹は捜査官としてのカンというよりも、その口調に奇妙な違和感を覚えて言った。どこかで誰かが似たような台詞をはいた気がする。
「貴方、時間を操るの?」
月龍が信じられないといった風で詰問する。
「時間を操る」という力は月龍が「光」と契約して手に入れた。月龍自身が手放さない限り何者にも手にいれることは出来ない。
それを何故彼が手に入れられたのか?
「理解不能ですか?理解しなくてもいいんですよ。・・・どうせ、すぐに終わりますから」
神父の格好をした者の口調は柔らかかったが、どことなく月龍を小ばかにしたような雰囲気があった。
「私たちの復讐のため、あなた方の力をいただきたい」
復讐という言葉に竜樹は相手の雰囲気からただならぬものを感じたのか、わずかに身構える。
そのときだった。
目の前のものが歪み始めた。周囲にあった木や探索用の機械や雨避けのテントが不自然に歪み始めたのだ。
竜樹と月龍は一瞬自分の目がおかしくなったのかと思ったが、違ったようだった。互いに目がおかしくなっていないと判断し、原因が目の前の人物にあると断定した。
だが、遅かった。
空間のゆがみは彼らの体をしばり、飲み込んだ。彼らは身動きどころか声も出せず、そのまま意識が闇の中に消えるのを感じた。
そんなバカな。
月龍は自分の力と同じ力を持つ者がいることに驚きを禁じえなかった。彼らを飲み込んだ空間は徐々に歪みを戻してあるべき姿に戻り、研究員の無残な死体だけが残った。

夜の洞窟には静寂が戻った。

再び・・・-竜樹サイド-
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