AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−

交わる光と闇 2人の天空その2

「んー・・・」
竜樹は目の前の景色をしばらく眺めていた。伸と征士も、またもぽかんとしていた。ドアを開けた先の青い空は高かった。
「征士」
「何だ?」
君には何が見える?という伸に、征士は答える。
「ナスティの家の周囲だ」
周囲は木々が茂っていた。そして、遠くにはあの赤い屋根が見えた。
「確か、伸が当麻とエンストを起こしたのって、ここだよな」
竜樹はしみじみと言った。隣で伸が暑さを思い出したのか、渋い顔をする。征士はなるほどとうなずいた。
「クラシックカーなど使うからな」
レーサーとしての経験からなのか、苦渋を示す。
「見掛けはよくてもちゃんとチューンナップとかをしておかないと、途中でエンストを起こすこともある」
征士は以前道路の途中でエンストを起こしていたクラシックカーを思い出した。もちろん助けたのだが。
「へー。征士、レーサーなのか」
竜樹にとってレーシングは興味の範囲外なので、少々棒読みである。だが征士に気を悪くする気配は無い。
「とりあえず、行ってみよう」
「賛成・・・といいたいところだけど、屋外ってのが気になるな」
竜樹は周囲の木々を眺めた。
先ほどまではロートリンゲン家の館にいたのだ。背後にはドアがくっきりと、木々をバックに存在している。ドアだけで、壁がまったく無い。アスファルトの道路のど真ん中にあるので、もし車がきたらそのままぶつかるのではないかと伸は思った。
「妖邪門から始まったんだ。車など来るはずなかろう」
征士が言う。
ドアの横を見ていた竜樹は見えない「壁」があるのを感じた。実際に触ると「在る」。ドアの背後には回れないようになっているらしい。湖や森にも入ろうとしたが、やはり壁がある。ドアを開けてみようとノブを触るが、開かなかった。鍵穴らしいものはなかったが、おそらく神父もどきの力で封鎖されたのであろう。
「前進あるのみ、か」
竜樹がつぶやく。征士と伸もうなずいてナスティ宅への道を歩く。

しばらく歩いていたが、暑さは感じなかった。部屋の中だからか、それとも幻覚だからなのか。木々から漏れる光は熱を感じなかった。伸と当麻を迎えに行ったときは確かに暑かったのにも関わらずだ。
「・・・・・・」
出てくるものは何も無かった。てっきり蛇女とかのような類が出るかと思ったのだが、出てきたのはため息だけだった。当麻と伸を迎えに行った場所から推察するに2時間はかかるであろう距離を歩いたのだが、時間という概念も無いらしく、後に月龍たちと合流した時別れてから2、3時間くらいしか経っていなかったことを知らされた。途中で伸と当麻を拾った電話ボックスを見て、徐々にゆっくりと緊張を解いていく。
ナスティ宅が近づいてきた。
周囲は昼間に見たときと同じで、湖もきらめいていた。
「竜樹」
「何だ?」
征士に呼ばれたので、返事をしてみた。だが、征士はナスティの家を凝視したままだった。伸は湖の方向を見ていたので、ちょうど征士の背中にぶつかりかけてつんのめっていた。
「な、なんだい?征士、いきなり・・・」
「あれは何だ?」
征士の視線を追いかける二人は征士の示したものを見て、片方は眉をひそめ、片方は目を丸くした。
柳生邸に近づくにつれて木々が開け、その前に陣取っている存在が見えてきたのだ。
「ドラゴン?」
「何で空想の動物が?」
竜樹は過去の経験を思い返していた。伸はというと、征士に「白炎も神話の『白虎』だぞ」と秀から得た知識を元に突っ込まれていた。
「それは分かるけど、でも、虎とドラゴンじゃあ違うよ!!」
伸はナスティ宅の前に陣取るドラゴンを見て叫んだ。白炎は白虎という神話にふさわしいくらいの存在である。だが、ドラゴンと思しき存在はグロデスクの一言だった。糸で繋ぎあわされた皮膚、鱗の無い手足。顔部分も骨が改造され続けたかのようないびつな形だった。フランケンシュタインというのがあれば、それのドラゴンバージョンかと思えた。
「ありゃ、所謂ドラゴン計画のひとつだな」
「ドラゴン計画?」
伸と征士が竜樹を見る。竜樹は冷静に説明した。
ドラゴン計画とは金剛の鎧に関する計画の一端で、竜樹のようなトルーパー計画とは別に生物兵器として開発されたものである。
「つくづく罪深いものだな」
征士は遠くを見るような目つきになった。伸は信じられないという顔で柳生邸の前に陣取るドラゴンを眺めていた。
「あれは・・・生きてるな」
高さは一番上の屋根まであろうかというドラゴンは生気あふれる感じで周囲をうろうろしていた。柳生邸に人がいないかどうか確認しているようだった。
「・・・・・・狼人間でよかったよ」
伸は昼にあった狼人間を思い出していた。あのドラゴンが近くにいたら、と思うとぞっとする。狼人間の攻撃力は、生命活動を終わらせていたからか、自分の拳が骨折しているにも関わらず襲ってきたところを見るに、加減が一切無かった。
「そういえば、何故狼人間は遼を狙ったんだろうな」
征士はふと竜樹や当麻たちから聞いた話を思い出した。あの神父は遼を狙うために狼人間を襲わせた。結果、純を狙ってしまったが。
「さぁ?」
竜樹は肩をすくめるだけだった。月龍がいれば4歳で死んだはずの秀麗黄のこととか断絶したはずの真田家のこととか少しは分かるだろう。
とりあえず柳生邸の駐車場で陣取るドラゴンを倒すことにした。

柳生邸の前をうろうろしていたドラゴンは道に立つ竜樹たちを認めると、ぐっと首を引いた。
火を噴くつもりである。
「サーカスの芸当、というわけじゃなさそうだな」
炎を避けた征士はドラゴンの口を見た。口の中には火炎放射器らしいものがつなげられている。

後に月龍と合流した時にドラゴンの精神体と肉体の違いについて説明してもらったが、いわゆる「3次元と4次元の空間の違い」なので精神体を倒すには空間を凌駕する鎧の力とかがないと難しいという。

眼前のドラゴンが実物なら、光輪剣や二条槍で充分である。
水と雷という反発する属性を利用して、連携することにした。
ドラゴンは鎧戦士2人とFBI捜査官を見比べたが、野生のカンがまだ残っているのか鎧戦士2人を選んだ。無視された竜樹は鼻白む。
「俺を無視するたぁいい度胸だな?おい」
征士は竜樹の秀によく似た口調を聞いてまゆを上げた。伸は狼人間を思い出す。竜樹も虎人間だというなら、ドラゴンの判断はある意味正しいのではないか。先ほどの蛇女も似たようなものだった。生身でも充分戦闘能力を持つ虎人間と、鎧の力がないと戦えない人間、どっちが弱いのか明白なのだ。

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