AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−
大地の深淵−竜樹編− 午後5時52分 in 小田原
「竜樹、もう一つ気になるけど、いいか?」
「なんだ?」
今度は顔を上げない。当麻は竜樹の気持ちが理解できたのか、そのまま続けた。
「『後継者はいない』と言っていたが、どういう意味だ?」
竜樹を見るに、10年くらい先ならば秀は存在するはずだ。
言外にそう言った。
居ないということは、つまり将来秀は事故か何かで亡くなるということか?
だが、竜樹は無言だった。
どれだけ記憶を辿っても、秀麗黄という人物は居ない。
従弟だというが、秀と親しくしたこともない。
月龍がいたら、少しは分かるかもしれない。
竜樹はおもむろに顔をあげると、当麻の質問に答えずにナスティに言った。
「悪いが、寝るところを貸してくれ。このリビングで良い。疲れた」
よく考えれば飛ばされる前は夜中の1時だった。
本来ならベッドタイムなのだ。
これが悪い夢なら、すぐに覚めて欲しい。
過去は全て終わったのだ。
竜樹の心中を見抜いたのか、ナスティは快諾した。
竜樹はもう秀を見なかった。秀が従兄だという気持ちはない。親族としての情以前に、竜樹にとって「従兄」とは月龍の夫である彼と、京都にいる口やかましい彼であった。
そんな竜樹の気持ちが伝わったらしく秀もあえて何も言わなかった。ただ眼前の従弟が自分を否定しないどころか肯定もしないという事実に、打ちのめされていた。
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