AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−

天空の彼方―月龍編― 天空の彼方から

月龍は焦った。
始まりの幕を上げたのは、他ならぬ自分だった。そして、そこから幾多もの悲劇が繰り返される。自分もまた天空の継承者として生まれ、処分されるのだ。
竜樹が生まれる羽目になったNGCの計画も、元を正せば自分のせいである。

焦りすぎて目的地に向かう途中に仕掛けられたトラップに気づかなかった。神父もどきが仕掛けた黒い呪いである。「停止」という呪いで、仕掛けた条件次第では能力が使えなくなるというものだ。

月龍は天空の姿のまま飛んだので、呪いの気配に気づかなかった。急ぎ封印をかけ避けようとしたが、間に合わなかった。
彼の仕掛けた呪いが腕に沁みこんでいく。それはどす黒い模様となって腕に残された。
それでも何度か封印をかけようとしたが、封印が動く気配が無かった。天空の鎧も肉体に貼り付いたかのようになってしまった。

-------しまった。

これでは何も出来ない。「輝煌帝」の力が使えない。
この姿のままでは時空間を渡り続けることも難しい。急ぎ抜けないと。その時、弥生時代で会ったガルーダがやってくる気配を感じた。
「他にも居るのか」
研究所の実験体の記録を思い返していた。

何とか時空間の穴を見つけないといけない。
幸い剛烈剣だけは使える。
それでも「輝煌帝」の力は停止した形となったので、体がひどく重い。
時空間を抜ける穴、日本の首都・東京にある新宿につながる穴を遠くに見つけ、何とか抜け出そうとした。
が、追いかけてきたガルーダがふいに消えたのを感じた。
時間軸は同じだが空間は異なる。

ガルーダが消えたあたりを見ると、小さいながら穴があった。
そこから2人の人間の気配を感じた。空間の間にいつの間にか迷ったらしい。
これをかぎつけたガルーダは、月龍よりも弱い者を狙ったのだ。

過去の人間には干渉はしないほうが良いと思ったが、そうも言っていられない。
すぐにそこから空間を抜け、ちょうど停まっているパジェロの上に浮かぶ形となった。ガルーダはボンネットに立って運転席に向かって口を開けていた。ガラスの反射から、席に2人いるようだ。出てこないところを見るとガルーダに襲われたショックで動けないらしい。無理もない話だ。ガルーダというのは便宜上の名前で、実体は燃えたコンドルのようなものだ。
そんなものがいきなり目の前に現れたのだ。一般人ならば恐怖で動けないであろう。
ガルーダは月龍が上に来たのを感じ、口を閉じてぐっと胸をそらせて羽ばたく。
楽しみを邪魔されたと思っているらしい。抗議の鳴き声がする。
が、月龍は手に持っていた翔破弓と剛烈剣を取替え、剛烈剣を銀色に輝く槍に変えた。
それをガルーダの顔に叩き込む。
ガルーダは槍をもろに食らい、パジェロを掠めて道路に転がった。赤い光が闇の中、二転三転する。「何も無い空間」が光に照らされる。どうやら「時空間」と「空間」の隙間のようである。月龍は舌打ちした。
時空間と空間の境目が、あやふやになってきているのだ。
何の力も持たぬ只の通行人が時空間の狭間に飲み込まれたケースはいくらでもある。
最近では1973年に、夫の目の前で新妻が地面の裂け目に吸い込まれるという事件があった。もちろん輝煌帝の力が原因というわけでは無いし、偶然の産物で時空を越えてしまうケースもある。だが、時空間と空間をあまりにも頻繁につなげすぎると、境目があやふやになってしまう。
結果として今回のように隙間に飲み込まれるものも居るのだ。

-----この事が終わったら、空間の境目を厳重に作らねば。

ガルーダが絶命したと確認できると、降りて銀の槍を取った。
そのときだった。嫌な思い出のある名前を呼ばれた。

「当麻兄ちゃん?」
「当麻?」

月龍は顔をしかめたが、無視するわけにもいかない。
車にいたのは柳生博士が若くなったような女性と、快活そうな少年だった。
最初は羽柴当麻の身内かと思ったが、若い柳生博士を見て違うことを即断した。

車から降りた彼らは月龍を見て立ち止まる。彼らも月龍がまったくの別人であることに気づいたようだ。

月龍は若い柳生博士を見て少し安心した。月龍の時代からせいぜい10年くらいは前であろう。
「貴方は?」
柳生博士の問いに答える。
「月龍です。柳生博士と・・・そっちは知らないですね」

始まりの終わり2 交わる時