AEON−鎧拾遺伝サムライトルーパー−
天空の彼方―月龍編― 始まりの終わり
運命の時は徐々に近づいてくる。「世界の異なる鎧戦士たち」が交わる時である。
出来れば「かろうじて生存していた」月龍と竜樹の協力を仰ぎたかった。だが、彼らは「鎧の歴史を容認すること」を選んだ。
それどころか邪魔をされ、結局ここまで来てしまった。
元の時間に戻ってもう一度やり直そうかと思ったが、月龍以前にもう一人の自分と対峙した場合を考えると出来なかった。
いっそ「輝煌帝の源」が生まれた時代に行こうかと思ったが、どうやら輝煌帝は人々の「エネルギー」を受けて生まれるらしく、マイナスのエネルギーを受け続けた「源」は破壊の象徴として「輝煌帝」を作ったようであった。
神父の格好をした者、本名とも言えるナンバー「K/J/0267号」は自分の身に起きたことを思い返していた。
そのたびに怒りで震える。
NGCではたくさんの仲間達が切り刻まれ殺されていく。
自分もあちこちを刻まれた。一生消えることのない刻印を刻まれた。
何故だろうか。
鎧の継承者を作るため?何故彼らは鎧の力を欲するのか。
それは自分たちにはかかわりのないものだ。
それなのに、何故彼らは自分たちを切り刻んでは実験を繰り返すのか?
私は自分の生まれた場所を知らない。
気がついたらあそこにいた。
赤子のうちに連れてこられたのかもわからない。
何年も切り刻まれて生きているうちに、「光」と「影」が私の前に現れた。
そのとき私はまたも麻酔で眠らされていたが、その真っ暗な夢の中で彼らは私に言った。
------お前を選ぶ。
私は彼らが何を言っているのか何をしようとしているのか分からなかった。
ただ、彼らは私の中にあった「怒り」のみの感情を読み取り、言った。
「その『怒り』を我らに」
彼らは、私に語りかけた。
「我らの世界を生み出すために」
気がついたとき、私の周囲には肉の塊が散らばっていた。
いずれもシュレッダーで裁断されたかのようなものだった。独特の匂いが漂ってきた。
手術台から降りると、足の裏に水の感触がした。床は血の海だった。
その源は、周囲の肉のカタマリであった。いずれも避ける暇がなかったのか、手術台の周囲に散らばっていた。
彼はゆっくりと降り立ち、台を回って出口の扉をあけると、外は阿鼻叫喚で満ちていた。
私の「兄弟達」が復讐をしているのだと分かった。
研究員達は逃げ纏っていたが、転んだ隙を見て「兄弟達」が襲い掛かった。研究員の悲鳴とともに「音」がした。
常人なら顔をしかめたくなるような音だろう。
が、私には一種の音楽のように聞こえた。
警備員が研究員達を助けるべく必死で銃で応対するが、改造に改造を加えられていた彼らの頑丈な肌に銃はきかなかった。
私はまだヒトの形を保っていたが、彼らは私を見ても襲わなかった。テレパシーらしいものが脳裏に伝わってきた。
------兄弟よ、ありがとう。
彼らは私の背後に居た警備員の銃から私を守り、一撃で警備員の頭を潰した。
私は彼らにうなずくと、ゆっくりと歩く。
確かまだヒトの形をとった実験体が残っていたから、彼らも解放すべきだろう。
そう思って初期実験体がいる部屋に向かったが、そこでは別の阿鼻叫喚の絵が広がっていた。部屋の中は円筒形のガラスケースが並んでおり、中にはコードでつなげられていた「人」たちがまどろむような表情で座っていた。彼らは老若男女問わず入っていた。「ガラスの牢獄」とも言えるもので、自分も入れられていたものである。コードは直接頭脳につなげられ、いろんな薬を入れられていたのだ。
だが、重装備の警備員が数人、散弾銃で一列に並べられたガラスケースの中の「人」たちを撃っていた。
ガラスケースは割れ、中にいた「人」はなすすべもなく銃を受けていた。「抵抗する」という思考もなくなっていたのだろう。彼らは白い衣服を朱に染めて後ろに吹き飛んだ。中には頭部や腕が衝撃で吹き飛ばされた者も居た。生き残った「人」たちも次々に胡乱な表情で弾を受けていた。
私は入り口に立っていた。
ガラスケースにいたものは全て、生命活動を停止した。
私に気づいた警備員は私を実験体だと認めたとたんに銃を向ける。
弾が私に向かってくるのが見えた。
それを全て無に返す。弾は全て当たる前に灰になった。
警備員はうろたえ、さらに狙いをつけた。
だが、そこで咆哮が聞こえた。
実験として連れてこられたウェアタイガーやウェアウルフが警備員たちの背後にいた。
気づいた警備員達は必死で彼らに散弾銃を向けたが、改造され続けた彼らの肌にはかすり傷すらもつけられなかった。
彼らは重装備の警備員たちを一撃の下で倒していった。
全てが終わるとウェアウルフは涙を流していた。ガラスケースのうち左端にあった3つの死体にゆっくりと近づいた。そこは老女と若い女と少女が血を流していた。
おそらくウェアウルフの家族だろう。頭にはめられている道具から察するに、マインドコントロールで洗脳されていたため「変身」すらも出来なかったらしい。
ウェアタイガーは家族が見つからなかったのか、ウェアウルフの一家をじっと見ていた。
私は彼に言った。
「鎧を無に帰そう」
鎧の力を欲した者のせいで、静かな暮らしは失われた。
ならば、鎧そのものを消せばいい。
私は先ほどその力を授かった。
ウェアタイガーはじっと私を見ていたが、次第に人の形を取り始めた。
金色の髪をした20代の男になり、茶色い瞳に残忍な光を浮かべた。もし月龍や秀がその場にいたらすぐに分かったであろう。目の色こそたがえど彼は竜樹と同一人物であることに。
「俺は金剛の継承者を狙う。あいつの首級はおれが頂く」
私に異論はなかった。
過去を思い出していた彼はふと自分を追いかけてくる気配を感じた。
月龍だった。
この時代でも邪魔が入ったなら決着は鎧戦士達がいる時代になりそうだ。
ウェアタイガーことWT−038号は一足先に「金剛のいる世界」にいる。
私が引っ張り出してきた記憶の場所で、金剛の秀を待っているのだ。
ただ、あの時何故か竜樹だけは「別世界」の「現代」に行ってしまった。
誰が呼んだのか。
こればかりは彼自身にも分からなかった。
彼は物思いを断ち切り、月龍を止めるための罠を作った。鎧戦士達ならともかく同じ力を持つ月龍相手だと気休め程度だが、時間稼ぎになれればそれでいい。
罠を仕掛け終えた彼は、時空間を抜ける時、ふいに音が聞こえたような気がした。
「・・・シャラン・・・」
それは金属がこすれるような音だったが、物思いに耽っていたせいであろうと決め付けた。
この時彼がその場に留まっていたら、反転して時空間を逆行する月龍を見たはずだし、元凶がどこにあったのかを見出すことが出来たことだろう。
が、彼はステージを「現代の新宿」に移してしまった。彼が消えた場所、罠のある場所まであと少しというところで、月龍がやってきた。
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